アメリカ陸軍の次世代分隊火器(NGSW)プログラム、フェーズ2に3社が選ばれる
世界的な軍需企業や銃器メーカーが顔を揃える
アメリカ陸軍は、同軍が進めるM4/M16とM249軽機関銃の次世代化及び、その両方に共通で使用する新弾薬6.8mm弾の開発・選定プログラムNGSW(Next Generation Squad Weapons)についてフェーズ2に進む3社を選択したことを発表した。選択された3社は以下の通り。
■General Dynamics OTS
■AAI Corporation Textron Systems
■Sig Sauer
日本のサバゲーファンの間でも馴染みあるメーカーはSig Sauerのみといったところだろうか。しかし、他2社もアメリカでは軍需産業における超巨大企業であり、車両や無人システム、機関砲といった部門では既に大きなシェアを誇っている。小銃に関する開発はあまり耳にすることがないが、先日発表したMARS Inc.とCOBALT KINETICSのカービンと軽機関銃は企業体として小さいこともあってか残念ながら選ばれなかったようである。他にも、FN社などがフェーズ2に残れなかったという。
General Dynamics OTSとは?
親会社に重機械系の複合企業を持つ航空宇宙産業や軍用車両、防衛関連の企業で、航空機向けの銃身なども多く手掛ける。本来、カービンなどの開発はあまり聞かないメーカーであるが、M60機関銃のバレル製造をしていることもあり今回のNGSWプログラムへの参加となったと思われる。
親会社のGeneral Dynamics自体は1899年から続く歴史ある企業で、世界中に顧客を持つニューヨーク証券取引所上場の超巨大企業。軍需産業でも世界第6位にランクされるが、民生産業における世界シェアも大きくそういった企業としての強さもアメリカ陸軍にとっては大きな選考基準となっているのは間違いないだろう。
6.8mm弾薬の開発については既に複合素材薬莢の開発・販売を行っているTrue Velocityと提携し、銃器はGeneral Dynamicsが、弾薬はTrue Velocityが開発するという形でプロジェクトが進められている。
AAI Corporation Textron Systemsとは?
こちらも親会社に巨大な複合企業を持つ航空宇宙産業、防衛産業の開発製造企業。2007年からTextron Systemsの1ユニットとして運営されており、無人航空機や兵器システム、銃器をそなえる地上戦闘車両などを製造している。アメリカ国防総省や他国の防衛省(同盟国のみ)、アメリカ連邦機関などを顧客に持っている。
武器そのものだけでなく軍事物流サービスやエンジニアリングサービスの提供も行っており、倉庫関連のシステムやメンテナンス機器も取り扱う。
General Dynamics OTS同様航空機に関する事業にも強く、F-22やF-35など軍用機の兵器システムや機体メンテナンストレーニングシステムなどのシミュレーションシステムを開発するなど、軍事の中でもバックアップ部門の訓練に関わる事業が多い。
銃器関連では車両に搭載されるM85機関銃や、M249の性能を上回るとされるLSAT軽機関銃などを開発しており、NGSWプログラムでも期待値の高さが伺えるメーカーである。
▲AAI Corporation Textron Systemsが発表済みのLSAT軽機関銃
Sig Sauer
サバゲーファンにはもはや説明不要の巨大銃器メーカー。1985年にSIGARMSとして設立されたSIGグループ銃器部門のアメリカ現地法人が元であるが、紆余曲折経て現在ではSIGグループから銃器部門を買収した投資家が設立したSWISS ARMSの傘下で、2007年より「Sig Sauer」に改称されている。
最近のニュースではポリマーフレームオートのハンドガンであるP320をベースとするM17/M18ピストルがアメリカ5軍で配備されるなど大きな功績を挙げている。その他、モジュラーライフルであるMCXがデルタのLVAW(Low Visibility Assault Weapon: 低視認性突撃銃)として採用されるなど、近年では最も目覚ましい実績を持つ銃器メーカーと言っても過言ではないだろう。
選ばれた3社は今後、27ヶ月にわたる期間を経て試作品を提出し第1線の部隊でのテストを受けることになる。何十年もの間、基本形を変えずに使われ続けてきたM4/M16やM249がどのような次世代分隊火器に変わるのか、そしてスタンダードであり続けた5.56×45mmNATO弾がどのような弾薬に取って変わられるのか、期待して待ちたいところである。